本記事は連載記事「辞書の有効活用法」の第2回目です。
辞書を使いこなす上でまず身につけておきたいのは、「辞書を速く引くコツ」です。目当ての言葉を見付けるのにかかる時間が短ければ短いほど、辞書を引く作業の心理的障壁が低くなります。
ちょっとした暇さえあれば SNS をチェックする習慣が身についている人は、驚くほどの速さでスマートフォンを取り出して SNS アプリを開くことができるものです。その域に逹すれば、電車の中だろうが授業中だろうが、まるで呼吸をするように SNS にアクセスすることができるようになるでしょう。
それと同じように、一連の動作が体になじんで、素早く言葉を見付けられるようになれば、辞書に対する抵抗感はまったくなくなり、気付いたらいつの間にか辞書を引いている、というレベルにまで到達できるはずです。まずは事あるたびに辞書を引く習慣を身につけましょう。
そのためには、辞書を引く環境を整えておく必要があります。自分の生活環境に辞書を溶け込ませるにはどうしたらよいか、様々な手段を比べて検討しましょう。以下に代表的な手段を紹介します。
普段使いのスマートフォンに辞書アプリを入れておくのはよい手段です。『三省堂国語辞典』のような小型のものから『広辞苑』サイズのものまで、様々な辞書アプリが提供されていますので、予算と相談しながら好みのものを選びましょう。最近のアプリは機能も充実していて、キーワード検索以外にも様々な引き方ができるものが出ており、なかなか楽しめます。なお、Web ブラウザで無料のオンライン辞書にアクセスするのは、アプリに比べるとどうしても遅くなりますので、スマートフォンを使うならアプリの使用を強くお勧めします。
PC 上でなら Web ブラウザでオンライン辞書を使うのが一般的ですが、ブラウザの拡張機能を使うとさらに高速に引けるようになります。例えば Google Chrome で Weblioを使う場合は、Weblio エクステンションという拡張機能が使えます。
紙の辞書を使うなら、やはり卓上に常に置いておきたいものです。本棚に置いておくとそれを取り出す手間がどうしても心理的障壁になってしまいます。辞書を痛めないようにと紙箱に収めて置いておくのもお勧めしません。辞書は使い潰す覚悟で、引きやすさ最優先で扱いましょう。
『広辞苑』や『大辞林』といった中型の辞書を素早く引くワザとして有名なのは、上下さかさまに置いておく、というものです。辞書の背に指をかけ、手前に倒せばすぐに正しい向きで辞書を引くことができます。中型の辞書をよく引く習慣のある人は、一度試してみてください。
余談ですが私は学生の頃、使い慣れた小型辞書で言葉を調べる場合、探す言葉がはっきりとわかっているのであれば、辞書をパッと開いて前後数ページ以内にその言葉を見付けられるという特技を持っていました。卓上の辞書に手を伸ばしてから目当ての言葉を見つけるまで、2秒とかかりません。最近は電子辞書に頼ることが多いせいか、この能力はだいぶ衰えてしまいましたが、いまでもどうかすると電子辞書を引くよりも早く済むので、紙の辞書はいまだに手放せません。
辞書を素早く引くことができるようになり、辞書への抵抗感が薄れてくると、「知ってるつもり」の言葉であっても、一応確かめておくか、と気軽に辞書を引く習慣が身についてきます。呼吸をするように辞書を引けるようになるまで、しっかり習慣づけましょう。