そろそろ卒論・修論などの学位論文の執筆を準備する時期になってきましたね。
この時期になると論文の準備としてまず「章立て」、すなわち各章や各節にどのような内容を書くか、その概略を書くよう指導されることがあります。先輩の書いた卒業論文を参考にしてすでになんとなく章立てを作ってみた、という人も、この時期ならすでにいらっしゃることでしょう。
しかし肝心の中身、各章や各節で具体的に何を書くべきか、についての設計はできているでしょうか。
章立てを書き上げると、なんとなくわかったような気になって安心しがちなのですが、実際にはこの、中身についての設計ができていなければ、章立てについての設計はほとんど意味をなしません。
本書では章立てを設計する前にまず論文の論理的骨格を設計する、という手順を推奨しています。ここではその具体的手順を解説します。
論理的骨格を設計する
論文の「論理的骨格」とは、その論文で報告する研究が、どのような課題をどのように解決し、そこからどのような結論を導いたか、それらの要素を整理したものを指します。本書では「2.7 本論は『IMR』」で紹介している、
- 問題 (Issue)
- 手段 (Method)
- 結果 (Result)
の三つ、および「4.4 理工系論文の書き方」で紹介している、
- 序論
- 背景
- 議論
- 結論
を合わせた、7つの要素について、それぞれ箇条書きでまとめるのを推奨しています。
このとき、「問題・手段・結果」についてはさらに、「問題」と「結果」をまず明らかにし、その後に「手段」について整理する、という順番でまとめていくことを私の研究室では推奨しています。これについて詳しくは「『問題』と『結果』を明らかにしよう」を参照してください。
骨格ができあがったら、この段階でまず指導教員の指導を仰ぎましょう。指導する立場から見ると、この段階で直す方が、章立てに入ってから直すよりも手間がかからないのです。
論理的骨格から章立てを作る
論理的骨格が十分に整理できたら、そこから章立てを構成していきます。
章立てが論理的骨格と異なるのは、読み手は多くの場合その順番に目を通すだろう、ということを念頭に置く必要があるということです。「3.5 既知の情報から新しい情報へとつなげよう」や「3.6 全体から詳細へ」で解説しているように、読み手にとって受け入れやすいように情報の提供順を整える必要があります。
とはいっても、これは普段から論文を読み慣れていれば、おのずと読みやすいもの・読みにくいものの差のあることがわかっているでしょうから、よく書けていると思った論文の構成を真似するようにしましょう。研究室に先輩の卒論が揃っているのであれば、その中からもっともよく書けていると思ったものを選んで参考にしましょう。自分の研究に似ているかどうかは、この際あまり関係ありません。
本書では他にも以下の各TOPICで、実際の章構成について助言しています。参考にしてください。