Header image

読み手は先を予測しながら読んでいる

旧版1-5図解

読みにくさの原因は「予測」にあり

自分で読んでみてもそれほど読みにくいとは思えない文章なのに、他人に読んでもらうと「なんだか読みにくい」と言われてしまうことがあります。そんなときは、読み手の「予測」に注意を払いましょう。

読み手は文章を読みながら、それまでの内容を手がかりにして、その先の展開を予測しています。

ちょっと実験してみましょう。次に並べた単語はいずれも、先頭と最後の文字は元の単語のままですが、間に挟まれた文字をでたらめに並べ替えています。元の単語を推測しながら読んでみてください。

A: たねまぎ えまだめ さいまつも とがらうし ほんそうれう さどんえやう

スラスラとは読めないにしても、だいたいはつっかえずに読めたでしょう。では、次の単語群ではどうでしょうか。条件は同じです。

B: たのけこ ほりうつ せくんたき ぶぼうんぐ せいかんすん たまらわいし

今度は、読むのにちょっと時間がかかったのではないかと思います。

A の方は「たまねぎ」「えだまめ」がわかった後は、どれも野菜の名前だろうと予測しながら読んでいくことになります。実際、続く単語はどれも野菜の名前なので、解読は素早く行われます。一方、B の方はそうした予測によって効率を高めることができないため、つっかえてしまうのです。

私達は、文章を読むときにはこのように、それまでの内容を手がかりにしてその先をおおまかに予測し、その予測と実際に書かれた内容との関連を判断しながら読んでいます。

読み手の予測をコントロールする

文章展開についての予測は、それまで読んでいた文章の内容から読み手が組み立てたメンタルモデルによって導かれます。「1-4 驚き最小原則」で学んだ原則を少しアレンジして、予測と実際の文章とのギャップをできるだけ小さくし、読みやすい文章にするための原則を立てると、次のようになります。

  1. 読み手が予測を立てやすい文章を書く
  2. 読み手の予測から外れないように書く
  3. 予測から外れる文章を書かねばならない時はそれを予告する

予測をコントロールする手段は様々

読み手は、文章の様々な要素を見ながら予測を組み立てています。その予測を、書き手の思惑へ向けてコントロールする手段はいろいろありますが、その基本となるのが「つなぎ」です。「つなぎ」については「2-6 『つなぎ』が主張を明確にする」で説明しています。

「つなぎ」の具体的なものとしては、例えば「助詞」や「接続詞」があります。それぞれ、「2-7 接続詞が文脈を作る」「3-5 助詞の使い方を見直そう」で説明しています。