「『なぜ』の不足」は、福地が Twitter に投稿したものを元に、説明を追加したものです。左記の Twitter 投稿がどのような反響を呼んだかについては、「本書が誕生したきっかけ」に記してあります。
文章書きに慣れてくると、「なにを」「どうした」といった、事実を描写する記述はそこそこ書けるようになってくるのですが、そうなると次に課題となるのが「なぜ」の不足です。
「なにを」にせよ「どうした」にせよ、その背後には理由があるはずです。「なぜそれなのか」「なぜそうしたのか」といった情報が不足していると、読み手の困惑を招いてしまいます。というのも、書き手がそれまで記してきた文章から、読み手はその後の展開についておおまかな予測を立てています。もし書き手の選択したものがそうした予測と反するものであった場合に、読み手は「なぜそれを選んだの?」という疑問を持つことになるのです。
そうした「なぜ」を補うために、書き手がどのような判断基準を持っていて、どのような検討のもとにその選択をしたのかを、言葉にして書いていきましょう。
注意して欲しいのは、「なぜ」を書く目的は、読み手を納得させることにあるということです。単に自分が最初に思いついた理由を書くだけでは、不十分な場合があります。本書にも書きましたが、著者が実際に遭遇した例では、
お金がなかったので、レストランへ行った。
という会話を耳にして面くらったことがあります。なるほど、ハンバーガー屋でもなく牛丼屋でもなくレストランへ行った理由として「お金がなかったので」とは書かれていますが、これがどうしてその理由になるのか、私にはさっぱりわかりませんでした。(ちなみに答は本書に書いてありますので、気になる方はぜひ本書をお求めください)
文章を書くときは、「書き手の常識は読み手の非常識」であるかもしれないことを、常に気に留めておきましょう。