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「つなぎ」が主張を明確にする

旧版2-6図解

情報は他の情報と適切につないだ状態で読み手に提供することが大事になります。本書ではこの情報と情報との関係を示す部分を「つなぎ」と呼んでいます。

「つなぎ」は並んだ二つの情報の間に挟まり、それらの情報がどのように関係するのかを、読み手に知らせる役割を持ちます。関係を示すことで、個々の情報を個別に示す以上の理解を読み手にもたらします。

「つなぎ」は続く情報の理解を助ける

「つなぎ」の効能の一つは、つなぎの後に続く情報を理解するための基礎を用意することにあります。「1-5 読み手は先を予測しながら読んでいる」で説明したように、人は文章の展開を予測しながら読んでおり、その予測と実際の文章とを照らしあわせながら理解を進めていきます。つなぎはその予測を制御するために利用することができるのです。

「つなぎ」が主張を形作る

また、つなぎには書き手の主張を込めることもできます。

例えば、「コンピュータのプログラムは数学的な考え方に基づいている。」という文の後に、次のどちらかの文章をつなげることを考えてみましょう。

A:「だからプログラムは難しい
B:「しかしプログラムは簡単ではない」

AとB、どちらをつなげても「プログラムが難しい」という意味では同じです。

しかしBをつなげてみると、そこからは書き手の「数学的な考え方に基いているなら、普通はそれは簡単なはずだ。しかしそうではない」という主張が立ち上がってきます。情報をどうつなげるか、そのつなぎ方に書き手の主張を込めることができるのです。

ただし、これは短い言葉で簡潔に主張を述べることができて便利な反面、気をつけないといけないこともあります。「1-6 事実に基いて、正確に書く」に書いたように、事実と意見は明確に分けて書くことが求められます。主張をするのであれば、詳しい説明や論拠もあわせて示すことが必要です。つなぎは簡単に主張を表現できてしまうので、この点をおろそかにしがちです。注意しましょう。