このページをお読みの方でも、いまさら「てにをは」の正しい使い方は教わるまでもない、という方のほうが大半でしょう。しかし、より効果的に助詞を使いこなすことはできているでしょうか。
例えば「駅へ行く」と「駅に行く」の違いを理解し、自分が伝えたい内容によりふさわしい方を選択できているでしょうか。助詞は正しく使うだけでなく、より戦略的に、効果的に使うことを目指すことで、文章力を一段高めることができます。
助詞の役割は、情報と情報を「つなぐ」ことにあります。「2-6 『つなぎ』が主張を明確にする」で説明したように、「つなぎ」は効果的に使えば、先の予測を助け、また主張を明確にするのに役立ちます。助詞にもそうした効能があるのです。
本書では、助詞の細かな使い方について説明をしています。その内の一つをここで紹介します。
A: この実験では、被験者はレバーを操作した。
B: この実験では、被験者がレバーを操作した。
この二つは、似たような意味ですがその意味するところが異なります。Aの文では、被験者の役割についてはすでに説明済みであり、「(その)被験者は(何を操作するかというと)レバーを操作した。」と、レバーの方を新規情報として提示する形になっています。
一方Bの文では、「(誰が操作するかというと)被験者(の方)が(その)レバーを操作した。」と、レバーの方が既知の情報で、それを操作するのは被験者の方であった、ということを新規情報として提供する形になっています。
読みやすい文章を書くためには、助詞のこうした細かな違いに気を配りましょう。